(その2)因果と相関

■命題1:広告費が上がれば、売上が上がる


「広告費」と「売上」が図2のような関係にあるとき、両者には明らかに正の相関がありそうだ。相関係数を計算すれば、その相関の強さも分かるだろう。しかし、一般的に相関関係からは、どちらが原因と結果であるのか、その因果関係は分からないことが多い。この「広告費」と「売上」の関係についてもそうである。


例えば、売上が下がると、一般的な企業の場合、まず次年度の予算では広告費が削られる。しかし、広告費が削られると、その結果として売上もまた下がるであろう。このように、「原因」と「結果」がぐるぐると回り、因果関係がよく分からない場合がある。
(この場合、「広告⇔売上」という関係になり、互いに必要十分条件にあるといってもいいかもしれない。)


僕が思うに、「原因→結果」の方向が分からないときは、「自然の斉一性原理」に反しているときだと思う。自然の斉一性原理とは、

『自然界で起きる出来事は全くデタラメに生起するわけではなく、何らかの秩序があり、同じような条件のもとでは、同じ現象がくりかえされるはずだ』

という自然科学における大前提のことだ。光をレンズに通せば屈折するように、自然科学には観察に基づく物理法則がある。ここでは因果の方向性が明らかである。一方、広告と売上の関係では、「売上が下がっているから、広告費を削ろう」という人の意思が介在する。これは、自然の斉一性原理に反する。


社会科学において、因果の方向がよく分からないときはこのように人の意思が介在している場合じゃないかな、と思う。


(続く)